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11.12017
ギャッベとラグの違いって何ですか?

実は、ギャッベとラグは全くの別物です
ギャッベという言葉が浸透するにつれ「ギャッベと絨毯、ラグって何が違うんですか?」といった質問をよくいただきます。ギャッベとラグ (ここでは一般的で安価なラグをイメージしています) は、「繊維を織って作ったもので部屋に敷くもの」というくらいしか共通点がないといってもいいほど別物です。 では、はじめにギャッベについて少し説明しておきます。ギャッベの語源は「粗い」とか「雑」という意味
ギャッベとはペルシア語で「粗い」とか「雑」と言う意味であまりいい言葉ではありません。古代の昔からイラン西部のザクロス山脈から南部フォース州の高原に住む遊牧民によって織り続けられている毛足の長い絨毯を指します。イラン南西部の都市シラーズ周辺の砂漠地帯に住む遊牧民が、自分たちの飼っている羊たちの毛を移動する先々に生えている草花や木の実などによって染め、空や草原、馬や羊、犬や子供たちなど、周りにある風景や動物などをモチーフに自分の好きなデザインを自由に織りあげた100%天然素材の素朴な絨毯のことをギャッベといいます。ギャッベはもともと遊牧民が、朝晩の凍るような寒さや、砂漠の焼けるような暑さから自分たちの身を守るために、テントの中に直に敷いて使用しているもので、外気の温度差に耐え、冬は暖かく夏は涼しいのが特徴です。
イラン南西部の都市シラーズ周辺に住む一般的な遊牧民のテント。
ペルシャ絨毯とも違うの?
ギャッベってペルシャ絨毯にも似てるよね? それもそのはずどちらも同じイランで伝統的に作られている絨毯です。ただペルシャ絨毯は工芸品として非常に洗練されています。綿密なデザイン画があり、産地によって伝統的なデザインが現在まで継承されており、斬新なデザインというものはあまり見受けられません。それに比べてギャッベは遊牧民が日常で使う伝統的な織物。色彩もカラフルでデザインもふんわりと温かみのあるゆるい雰囲気があります。このふんわりとした暖かいデザインが昨今のギャッベ人気をささえているポイントでもあるのです。ギャッベとラグの違い
ギャッベのことがわかったところで、ラグとの違いについて見ていきましょう。違いその1 素材
ラグはポリエステルなどの化学繊維から出来ているものが多いです。もちろん原料は石油です。 昔はナイロン製のものが主流でしたが、現在はポリエステル製品が主流です。価格が安いというのが一番の特徴です。最近のポリエステルは品質もよくなっており、汚れが付きにくかったり無駄毛なども出ない製品も多く、品質が劇的に上がっています。一方ギャッベは羊毛100%、つまりウールです。ウールの特徴は何と言っても夏涼しく、冬暖かいこと。この特製のおかげで羊さんも1年を通じて快適に過ごせるわけです。また、ウールには天然の皮脂成分があるため、燃えにくい、汚れがつきにくいなど昔から衣服の原料として重宝されてきました。この特性はもちろんギャッベの素材としても最適なわけです。 ですので、1つめの違いは「原料が違う」ということです。
羊毛や乳製品を与えてくれる羊は遊牧民にとって大切な財産。
違いその2 作り方
2つめは作り方の違いです。 一般的なラグは機械で織ります。同じ柄の製品が大量に生産できるので安く抑えることができます。 一方ギャッベは人の手で織られています。もちろんデザイン画などはないため同じ柄は存在しません。
ギャッベを織っていく遊牧民の女性

ギャッベを織る遊牧民の女性
違いその3 染め方
ポリエステルは染まりづらい性質があります。特殊な化学染料を使い、温度や圧力が調節された特殊な機械がないと染まりません。特殊な染料で特殊な技術を使ってはじめて化学繊維を染めることができます。 一方、ギャッベは自然素材で染められています。生産地であるイラン南西部の砂漠地帯に生えている胡桃の皮やザクロの皮、野草や木の根から抽出した自然の染料が使われています。そのため、仕上がりがなんとも優しい色合いになっているのが特徴です。( ただ、最近では化学染料を使うギャッベも出てきています )
織りあがったギャッベの毛並みを揃えるシャーリングという作業

織りあがったギャッベを洗う作業

水洗い後に天日干しされるギャッベ。完成は間近。